2011年10月21日金曜日

「風に立つライオン」余話・笑

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先日の「風に立つライオン」のブログを見たある塾生から質問を受けました。

「『最後になりましたが あなたの幸せを 心から 遠くから いつも祈っています おめでとう さよなら・・・』っていう部分がありますよね。あの部分がよく分からないのですが、何で『おめでとう さようなら』なんでしょう?」


私は一瞬言葉を失いました(笑)。


だって、あそこが全体の歌詞の中で一番よいところなんですから。


ただ単に日本の仕事を捨てて来たわけではない、日本でもできることをアフリカでやりにきたのではない、その裏には主人公の個人的な「犠牲」、自分ひとりの幸せを望むのではなく、いわば「公(おおやけ)」のために自分の幸せを後回しにした一人のドクターの、雄雄しくも清清しく、かつ凛とした姿があるわけです。


それを表立って言うのではなく、最後の一言でさりげなく言うところが、さだまさしさんの歌詞の「厚み」とも言える部分なのだと思います。


それまでの歌詞で、「ふ~ん、すごい人がいるね」と思っていたところに、最後のこの部分「おめでとう さよなら」で、


「そうなんだ、このドクターも、自分たちと変わらない一人の人間としての生活があった、小さな幸せを求めることもできたはずなんだ、それを振り切ってアフリカに行く、その決定・決心をさせるだけの状況がアフリカにあって、それに応える『使命感』を、このドクターは持っていた」


ということがはっきりと、言葉を超えてこちらの心に飛び込んでくるということです。


「たぶんこのドクターには、周りも認めた婚約者がいたのだよ。それを解消してアフリカに来たのだろうね。ドクターにはドクターなりの充実感もあったアフリカでの生活だったけれど、心のどこかで自分が幸せにできなかったその人のことがずっと気がかりだったのではないかな。


その人からある日突然手紙が届いた。それは自分の結婚を知らせる手紙だった。その手紙には自分の結婚のことだけではなく、もしかしたらこの主人公のドクターとの婚約を解消してからの、自分の「思い」がそれとなく書かれていたのではないだろうか。


『あの時はあなたがなぜそんなことを言うのか分からなかった。ずいぶんひどい人だと思った。でも時がたち自分もいろいろなことを考えて、今はあのときのあなたの気持ちが痛いほど分かる。私のことを愛していなかったということではなく、あなたにはあなたの使命とドクターとしての生きかたがあったということなのだろうと思っている。私は私の道を行くけれど、あなたのことは心から尊敬しているし、決して忘れない。あなたとの恋人時代の楽しかった思い出に心から感謝しています』


こんな内容だったのでは、と思うよ。


彼は、だから、彼女からの手紙を読んで、本当に嬉しかった。


自分が幸せにできなかった人が、自分の力で新しい生活を築こうとしているのだからね。彼女のことが今でもとっても好きで、その彼女が誇りをもって自分とのことを思い出してくれることを、自分のこれからの生活の支えにしてゆこうと思っている。


それが『おめでとう さよなら』の一言に、全部含まれているのだよ」


彼は私のこの長ったらしい、かつ饒舌で冗漫な説明を聞き、一応は納得してくれたようでした。でも彼が最後に言ったのが、


「先生、よくそこまで想像できますね。すごいと思います」


・・・(笑)。


どういったものやら・・・(笑)。